2011年12月16日〜31日
12月16日  ロビン 〔調教ゲーム〕

 エリックはもう日曜大工のクラスにその石を運びこんでいた。

「プロに見せたら、火で焼いても問題ないってさ。材料代いくら浮いた?」

「5フィート四方が本当なら」

 あとはそとの断熱と床のレンガ分だけ。予算内でおさまりそうです。

「しかし、彫れるのか」

 おれが聞くと、エリックは腕を叩いて、

「大の男が五人いて、時間が一週間もある。この世に不可能はない!」

 彼の能天気さにおれたちは笑ってしまいました。
 エリックはエンジンがかかると強い。沈みかけた気分がまた盛り上がってきました。


12月17日 フィル〔調教ゲーム〕
 
 石釜づくりの作業がはじまりました。硬い石をノミで半円に彫るのです。
 ピザ二枚は焼ける奥行きが欲しいなんていうものだから、けっこうな大きさの穴を空けることになります。

 十分もしてくると手が痛くなってきます。でも、一番、手間がかかるのはアルに秘密だということです。当日、床を作り、断熱レンガで覆った石釜を設置するという計画です。

 アルには外に出てもらわなければなりませんが、たぶん、彼はディナーを作るためにいるだろうなあ。


12月18日 キース 〔わんわんクエスト〕

 エリックの号令で、毎日石釜づくりが進んでいます。
 おれはいいだしっぺなのに、バイトがあるせいで作業にあまり入れません。

 ロビンとフィルとエリックが交代でがんばって彫っていてくれます。ミハイルもバイトが終わるといっしょに彫ってくれますが、最近ちょっと彼との間が気まずいです。

 なんとなく壁ができてしまったような。給料の使い方のことで、おれはなじったつもりはないけれど、そんな風にとられてしまったんだろうな。しかし、あやまるのも変だし――。



12月19日 アルフォンソ 〔わんわんクエスト〕

 我が家はいま、彫刻ブームだそうで。

 フィルによると、クリスマスにむけて皆さん、傑作を作り上げているとのこと。どうりで最近、指にバンドエイドした子が多いと思った。

 さてさて、クリスマスには何を作るか、こちらもそろそろ決めなくては。

 エリックはホタテのカネロニが好きみたいだ。ミハイルはスモークサーモンの生クリームスパゲティが好きらしい。でも、ご主人様は小食だから、パスタは重くないほうがいいかな。
 ドルチェはロビンの好物をいれて――。


12月20日 フィル 〔調教ゲーム〕

 石釜掘りが予定より遅れています。
 深い部分は掘りにくいのです。まわりに断熱レンガを張り、モルタルを乾かす時間もいります。

 バイトの終わったキースはがむしゃらに作業していますが、ミハイルはさぼりがちです。ロビンに言わせると、絵画クラスに入り浸っているとのこと。

 ご主人様に贈る絵を描いているのかもしれません。心がひとつになってないのは残念ですが、給料を出さない以上、強制はできません。リーダーシップは難しいのです。


12月21日 ロビン 〔調教ゲーム〕

 石釜の掘りが遅くてイライラします。

 これができなかったら、このクリスマスは何もないのです。ピザもない。ご主人様へのプレゼントもない。みんなへも何もない。
 アルはきっとご馳走を作ってくれるだろうけれど、そのアルにさえ贈り物ができないのはさびしいです。

 つい、さぼっているミハイルにいやな気持ちがわいてきます。あいつはひとりでご主人様へのプレゼントを製作しているのだから。

 おれも石なんか彫ってないで、編み物でもしたほうがよかったかな。


12月22日 エリック 〔調教ゲーム〕

 ロビンが切れた。
 指をしたたかに打ちつけて癇癪をおこしたのだ。

「やめようぜ。もう間に合わない。帰って、カードでも書いたほうがいい。アルだって別に釜なんか欲しがっちゃいないさ」

 キースは聞こえないふりをしている。おれはロビンを押さえ、

「間に合う。おまえはレンガを切るほうにまわれ」

「もう手が痛いよ。ミハイルはどうした。なぜ、やつだけやらないんだ」

 おれは紅茶のカップを押し付けて黙らせ、フィルに言った。

「ミハイルを呼んできてくれ。絵画クラスから。すぐにだ」


12月23日 エリック 〔調教ゲーム〕

 ミハイルは半裸にスウェットだけという姿で現れた。
 彼を見るロビンの目がとげとげしい。

 が、ミハイルは言った。

「みんなに渡したいものがある」

 彼は封筒を人数分出した。

「とても少ないが、これでカードなり、チョコレートなり買ってくれ」

 あけてみると五千セス入っていた。彼は絵のモデルをして、金を稼いでいたのだ。
 キースが泣きそうな顔になった。

「ありがとう。すごくうれしいよ」

 キースも気にしていたのだ。フィルが言った。

「よし、夜中作業させてもらえるよう管理室に交渉してくる」


12月24日 フィル〔調教ゲーム〕

 メリー・クリスマス! 石釜の作業はぎりぎり間に合いました。
 今日は設置、そして火入れです。

 アルにはぜひとも外に出ていてもらわなければなりません。しかし、彼も今日ばかりはディナーを作るためにキッチンにこもるつもりでいます。

 ここでロビンが男らしく切り札を出しました。

「ご主人様とのデート券」(笑)

 あれでご主人様にアルを連れ出してもらうとことにしたのです。ご主人様命令なら、アルも聞かないわけにはいきませんからね。


 2011年 クリスマス企画 アルフォンソのクリスマス

12月25日 アルフォンソ 〔わんわんクエスト〕

 幸福感がずっと続いています。
 胸が愛でいっぱいです。宙に浮くよう! 

 昨日は眠れず、深夜、ブレスレッドをご主人様に売りつけてしまいました。現金をもらって、それから家令に連絡です。クリスマスだけにスタッフはどこも起きていました。

 バラはすぐに届きました。
 みんなの部屋をめぐり愛をこめてバラの花束を置いてきました。

 ひとりひとり寝顔にキスしたくなるほどいとしかった。まったく天使みたいなやつらです。今日は天使のためにご馳走を作ってやることにしましょう。


12月26日 ロビン 〔調教ゲーム〕

 昨日は一日愉快でした。
 プレゼントを開けたり、ご主人様とゲームをして、一日みんな笑いっぱなし。

 フィルにつつかれてふりむくと、アルがソファで居眠りしていました。
 あいつは朝早くからパンをこねて、さっそく石釜をつかって料理していたのです。焼きたてパンと昨日の残りのターキーがすごくうまかった。

「かわいいな」

 フィルが笑いました。アルは幸せそうに寝ていました。腹に手をのせて、顔が笑ってました。ミルクをたっぷり飲んで満足した子猫みたいに。


12月27日 直人 〔わんごはん〕

 ご主人様が帰国され、今日は一日掃除をしていました。

 ケーキも肉も食べ飽きたし、からだも家もデトックスです。ふとんを干したり、たたみを拭いたりしていると気持ちがすっきりしますね。

 でも、夕暮れ、肴の支度をしようとして、今日はいらないんだと気づいたら、やはり、ちょっぴりさびしかったです。

 ご主人様がいる時は、クリスマスなんて気づかわなくてもいいのに、と思っても、沈黙のなかでひとりで食事していると、ご主人様のいてくれたありがたさがわかります。


12月28日 劉小雲 〔犬・未出〕

 ご主人様は今日、帰国されます。
 なのに、午前中ずっと部屋にこもったまま必死に葉書になにか書きこんでいます。

「年賀状! くそ、間に合わん!」

 印刷されたものに、一行ほどメッセージを書き込むだけのようですが、1000枚ぐらいあるようです。

「飛行機に遅れますよ」

「うう、シンドラーのリストの気分」

 何を言ってるんだか。クリスマスの間中、ゲームしたり、DVDみたり、エロいことばっかりしているからです。


12月29日 ルイス 〔ラインハルト〕

 今日はアキラに叱られました。
 病院でアレルギーの検査をしてこいと言われたのに、忘れていたからです。

 今は忙しい時期です。今度行く、と適当にに返事すると、彼は

「30日までに是が非でもいけ」

 と目をつりあげました。

「おれ、別に病気じゃないけど」

「病気じゃない。アレルギーがあるか知りたいんだ」

「30日までに?」

「なぜなら、31日におまえといっしょに年越し蕎麦が食いたいからだ! 日本のクリスマスなの! それが!」

 おれは慌ててポルタ・アルブスに予約をとりました。


12月30日 ラインハルト 〔ラインハルト〕

 クリスマス以来、ようやく早く家に帰れた。
 ウォルフが飯の支度をしてくれていた。

 おれはその背中を見ながら「腹減った」とわめいていた。昼にチョコレートをつまんだきりだ。倒れそうだ。そう訴えたが、ウォルフは「うるさい。指でもくわえてろ」とにべもない。

 彼の耳に噛み付いたら、すきっぱらに肘を喰らった。もう泣くしかない。

「腹減った、飯くわせろ! しからずんば死を」

 アホなことを言っていると、カツレツを揚げている肩がくすりと笑う。それを見るのが楽しい。


12月31日 ロビン 〔調教ゲーム〕

 今日、急にご主人様が帰ってきました。
 
 おれたちにはうれしいサプライズです。ご主人様はアルに大急ぎで蕎麦を打つよう言いました。

 アルはすぐに蕎麦粉を練り始めました。出来上がると、ご主人様はおれたちをダイニングに呼び、いっしょに蕎麦をかきこみました。おいしかったけど、あわただしかったです。

 食べ終わると、ご主人様はもう帰るというのです。

「蕎麦だけ食いにきたんですか?」

 そうだよ、とご主人様は笑いました。年越し蕎麦だけは、なぜだかおまえたちと食べたくて、と。


←2011年12月前半          目次          2012年1月前半⇒



Copyright(C) FUMI SUZUKA All Rights Reserved